中里技術研究室として長年研究してきた成果を世の中に活かすため、技術コンサルティング業務の中の防音系に特化させた部門名で、中里技術研究室:Nakazato Technical Laboratoryの略称です。
部屋を防音したい場合、普通は高額な防音業者を避けて一般の工務店に委託するか、通信販売で防音資材を購入して自分で設置されるかのどちらかだと思います。でも、残念ながら期待した結果には遠く及ばないことが大半です。
原因は「知識がない」の一言に尽きます。インターネットで容易に情報を集められる現在でも、正しい情報を得ることは大変困難です。
防音の秘訣は「
どの製品が良いか
」ではありません。「
どういう場合に、どこに、何を、どう使うか
」という技術力です。それには正しい診断、効果的な施策(設計)、要所を押さえた施工が重要です。 また、防災、空調・換気等の快適性、維持メンテナンス性など幅広い知識と柔軟な対応力も欠かせません。
これらの知識を活かしてクライアント(ご依頼者)の利益を最大にし、リスクを最小にするための手段をアドバイスするのがコンサルタントの役目です。
軸足を防音コンサルティングに移す以前は、目に見えない分野を得意とする建築コンサルタントでした。分かりやすい例で言えば断熱や結露、空調の気流などの分野です。
免震と言う言葉が少しずつ聞かれるようになったころ既に制振や減震という概念に着目し、様々なアイテムを研究するなか、革新的な“制震テープ”というものを見つけました。
そして探究心が高じてそのメーカーに就職し、さらに販促用の模型を企画・製作して各地の建築会社を練り歩いた経験もあります。
防音施工は少なからず建物の重心や剛性中心に影響を与えます。それらに無配慮な施工は建物の耐震性を落とす恐れがあります。また、防音施工すると必然的に断熱性能が上がります。それは結露の心配を招きます。
性能を長期間維持するにはメンテナンス性も重要な課題です。そのため、建築コンサルティング業務から完全に足を洗うことが出来ず、いまでも若干、引き受けています。
新築物件の防音施工や防音リフォームでは施工を建築会社に委託するのですが、既存の窓やドアをそのまま活かして防音加工してくれる会社や職人が存在しないので、これだけは仕方なく自分が施工を請け負っています。
賃貸住宅はもとより自己所有のマンションでも外部に面する窓やドアは建物共有部分にあたり、勝手に交換したり加工したりすることは出来ません。 そこで、既存の窓やドアの音漏れ経路と伝達構造を見極め、現況に合わせて防音用隙間テープなどを貼り足していきます。
二重窓や二重扉にしなくても、そこそこの遮音性が得られ、使い勝手も良いのでので「これで十分」と言われることも多いです。
インプラスやプラマードUなど樹脂製内窓を後付けするのが一般的ですが、防音機能はおまけ程度です。防音知識のない施工者が取り付けますので、多くは本来の性能さえ得られていません。 既存の窓の防音補修でも内窓以上の遮音性を得ることが可能です。 内窓に施すこともできますし、もちろん両方に施せば格段に高性能な防音窓とすることが可能です。
外部に面しているため戸建て住宅以外では防音ドアに交換することはできず、スペース的な制約で二重ドアにすることも困難な場合が多いです。 本格的な防音ドアには劣りますが、外部の音が気にならない程度にまで十分改善が期待できます。 室内ドアも防音補修が可能ですが、その場合は換気に対する配慮が必要になります。市販の防音ドアはサイズが決まっていますが、現状のドア枠に合わせて作ることも可能です。
ピアノは音量が大きく音域が広いので、部屋の中に組み立て式防音室を設置するのが一般的ですが、スペース的にも音響的にも強い圧迫感があります。
ピアノ自体の音を抑制する装置や防音資材も多々ありますが、音質やタッチに少なからず我慢を強いられるのが現状です。
そこで、音質も響きもタッチも変えず音量のみを下げる技術を開発し、既存のピアノに無加工で取り付けられるようにしました。これにより、部屋の防音対策が格段に簡素化できます。
技術屋のくせに「良好な近所付き合いは最高の防音対策だ」と公言しています。騒音トラブルは発生する前から双方が不仲であることが圧倒的に多いです。
間に入って双方の言い分を聞き、状況を確認すれば、わずかな対策で解決することがほとんどです。
しかしながら、弁護士が入るほどこじれてしまうと相手方に面会することもままなりません。 係争はできるだけ避けたいところですが、不毛な水掛け論にならないよう、技術的な根拠を提示し早期解決のお手伝いをしています。
防音や防振は対処療法であることが多く、基礎的な研究は余り進んでいません。一般的に対処療法は費用対効果が低く、経年劣化の進行も早いものです。
さらに、二律背反性を抱えていることが多く、妥協の産物でもあります。
そこで、基本に立ち返り、音や振動や揺れという物理現象が、すべて同じ“波の性質”を持つことに着目しました。面白ことに光も電磁波も地震も津波も、電子回路の信号も、うわさの波でさえも、すべて同じ波の性質を持っていました。
波は、同質の相手ほど伝わりやすく、異質の相手ほど伝わりにくい、干渉するけれど混ざらない、跳ね返っても変化しない、共鳴・共振により近くのエネルギーを吸収するなど、特異な性質を持っています。
振動解析では物理現象を電子回路に置き換えてシミュレーションすることが一般的ですが、前述の基本を理解していないと局所最適化に終わってしまいます。
一見、単純な構造に見える糸電話は、交流理論的に考えると、本来伝わりにくいはずの空気振動と固体振動を仲介するインピーダンス変換器(整合器)であることが分かります。
インシュレーターは、交流回路におけるアイソレーターや直流安定化電源装置内の平滑回路を物理構造に置き換えたものと理解できます。 交流理論を上手く利用して、根本的に鳴りにくい、伝わりにくい、揺れにくい構造の設計手法を確立すべく日々研究開発に取り組んでいます。